HBR-1000開発(41) KVN-BTF12解析 その1

安価なバッテリパルサ Kivner KVN-BTF12 の消費電流がやけに大きいのはなぜだろうという疑問がもやもやとしている。サルフェーション除去のためのパルス発生回路自体は非常に古い技術のようだ。元をたどればアメリカのアポロ計画当時に見いだされた技術らしい。よって、基本回路の特許自体は既に切れており公知の技術となっている。
実は、以前特許出願を真剣に検討した時期があり関連特許などすべて調査したのだが、結論として上記の公知の技術以上の新たな技術を活用する必要性を見出さなかったため特許化を断念した経緯がある。
この分野の製品には特許を謳うものがいくつか存在するが、それらは細かい工夫部分のものであり製品開発においてはそれらを慎重に避けて設計すれば問題になることは無いと判断した。
話が横道にそれたが、KVN-BTF12 の回路解析をしてみた。他社製品のリバースエンジニアリングはほめられたものではないが、KVN-BTF12 が公知の技術で設計されているなら大きな問題になることは無かろう。それよりもなぜ消費電流がやたら大きいのかという技術的な興味が勝ったというところか。

これが KVN-BTF12 の回路図である。あくまでも基板から回路を追って書き起こしたものであるため正確である保証はない。
回路図は予想の通り、公知の技術で設計されている極めてスタンダードなパルス生成回路だ。
基本は、NE555 タイマで生成したクロックに基づき Q2 の Pch-MosFET をON/OFFさせてパルスを生成しているだけのもの。NE555の周辺のR4、R5、C3で周波数とデューティ比を設定している。この定数から計算すると周波数 1.87kHz でデューティ比 95.7% のパルスが生成されるということ。

実測値で 1.98kHz なので、C3コンデンサの誤差を考えれば理論値になっていると理解してよいだろう。
NE555 は動作するために 10mA 程度の電流を消費する。CMOSの互換IC例えば ICM555 を利用するだけで消費電流は 1mA 程度まで削減することが可能だが、電源電圧の限界が15Vとバッテリ充電電圧としたら超えてしまいそうな値なので避けたのだろうか。ちなみに NE555 の絶対定格電圧は 18Vで12Vバッテリの充電電圧はこれは超えることはなさそうだ。NE555の電源電圧を少し下げるために R2 330Ω が置かれていると想定される。
私がこれまでの HBR-1000 の開発段階で得た知見によると、2kHz程度の周波数の場合にパルス生成回路で消費する電流は10mA以下と想定される。パルスドライブ回路の工夫により3mA程度まで削減が可能なはずだ。
NE555とパルス生成回路の消費電流合計約20mAと比べると、実測電流は倍程度でありかなり大きい。その原因を探ってみよう。長くなったので、続きは次回に持ち越す。

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