HBR-1000開発(42) KVN-BTF12解析 その2

2024年5月16日


上は KVN-BTF12 の回路図である。
前回はこの基板のメインとなるパルス生成回路の消費電流を想定してみた。
実際には、その倍程度の電流が消費されており、その原因について考察を続けてみよう。
先ずは、LED回路。この基板には緑LEDと赤LEDの2個搭載されている。動作中に点灯するのは緑LEDのようだ。緑LEDのドライブ電圧はだいたい 2.1V 付近。それを考慮すると、緑LEDで消費する電流は電源電圧により7.4mA(12V時)~8.9mA(14V時)というところ。LEDを点灯するために8~9mA消費している。
赤LEDと R6 と D2 は逆接続保護のための回路。逆接続したら赤LEDが点灯する模様だ。
もう一つ、R7、R8という電源ラインに接続してある抵抗がある。当然ここでも電流を消費する。計算してみると 3.5mA(12V時)~4.1mA(14V時)となる。これは何のためにあるのか?
抵抗の中点は Q5 の Nch-MosFET のゲートに接続されている。つまりは Q5 は電源電圧が低い時にゲートを閉じて電源を遮断する働きをするものと想定される。
MosFET WSR80N06 のデータシートを見ると、ゲートが開くGS間電圧は平均で3.0V(最小2.0~最大4.0V)となっている。ゲートオープンの電圧が個体差でこれだけばらつくものを制御に用いることはあまり好ましくないと思うのだが。それは置いといて。
電源電圧が 12V の時のゲート電圧は 9.0V であり十分にオープンしている。14Vの場合は 9.0V よりも上がるので特に問題は無い。それでは、ゲートが閉じる最小値 2.0V になるのは電源電圧がいくつの時か。計算すると 2.66V となる。つまりは、バッテリ電圧が 2.66V まで下がらなければ回路に電力が供給され続けるということ。これはおかしい。設計としてあり得ない。通常はバッテリ電圧が 12V 程度を下回ったら停止させるように設計するはずだ。
その原因を探ってみよう。以下は R7、R8、Q5 の周辺の写真である。

大きな四角い MosFET の上に R7 下に R8 が配置している。これはカラー抵抗と言って線の色で定数を表す抵抗器である。5本線で端が茶ということは精度1%の抵抗ということ。
R7 は 橙 橙 黒 茶 茶 なので、33011 となる。最後は精度なので、値は 3301 つまりこれは 330×10の1乗で 3.3kΩ となる。続いて R8 は 茶 赤 黒 黒 茶 なので、12001 となる。値は 120×10の0乗で 120Ω。あれっ?実測したら 10kオームだったぞ。あっ!逆だ!! 茶 黒 黒 赤 茶 と読むのが正解。10021 なので、100×10の2乗だから10kΩ。
と、ここでハタと気づいた。R8 の並びの R6 は実測で確認して 3.3kΩである。カラー抵抗の読み方はどちらから始めるのか、実は難しい。5%なら端は金色なのですぐわかるが、1%だと茶なので、どちらから読むかによって値が変わってしまう。R8 と R6 は同じ向きに配置したと仮定すると 120Ω として使われている可能性が考えられる。
もしかしたら、基板を製造するときに、120オームの抵抗を選ぶつもりが 10kΩの抵抗を選んでしまったのではなかろうか。R8 が 120オームと想定すると、ゲート電圧は、0.42V(12V時)~0.49V(14V時)となる。う~~~む。。。。これではゲートが全く開かない。10倍の 茶 赤 黒 茶 茶 で 1.2kΩ だと 3.2V(12V時)~3.7V(14V時)となる。3.0V となるバッテリ電圧は 11.25V、2.0V となるバッテリ電圧は 7.5V でありこれであればバッテリ電圧がある程度下がったら動作停止することになりそうだ。もしかしたら、1.2kΩ の抵抗を選ぶはずが間違えて 10kΩ を使ってしまったのかも。ただ、そうだとして 1.2kΩ にするとさらに消費電流が増えるという問題が生じるのであるが。。。
そもそもゲート閾値は 2.0~4.0V と個体差が大きいのでこれを動作停止制御に活用することは良い設計とは言えない。
解析がずいぶんと横道に逸れてしまったが、LEDドライブ回路の 8~9mA とゲート制御回路の 3.5~4.1mA で合計約13mA の消費電流となることが分かった。
これにパルス生成回路の 約20mA を加えると 33mA となり実測値に近くなる。
バッテリパルサはバッテリの再生、延命が主目的なので、動作することでバッテリを痛めては本末転倒であり消費電流はできる限り小さくするように設計しなければならない。が、KVN-BTF12 にはそのような設計の痕跡がみられない。あまり良い設計ではない事例の教訓として心に停めておこう。
いろいろと勉強になったから良しとしよう。

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