HBR-1000開発(40) 格安競合製品評価

2024年5月14日

このところAmazonで爆売れしているサルフェーション除去装置があるようだ。
Kinverというブランドで販売されている KNV-BTF12 という製品だ。

端子形状が丸型かワニ口かで2製品が売られている。両方合わせると1カ月で500個以上が売れているらしい。とにかく安い!我々のHBR-1000の概ね1/3という価格設定である。
公称値は以下の通り。

12Vバッテリのみに対応。消費(定格?)電流20mAということでHBR-1000のターボモード時の動作よりも大きな電流を消費している模様。
して、その性能やいかに?入手して具体的に評価をしてみた。
先ずは最もバッテリに負荷を与える消費電流について

入力電圧[V]消費電流[mA]
1032
1135
1239
1342
1447

どうも公称値よりも大幅に消費電流は大きいようだ。これではバッテリから電力を得ている装置としてバッテリに与えるダメージが大きすぎるように思える。
動作停止電圧はどうか。12V程度の適切な電圧で動作停止すれば一定以上のダメージは避けられるはずだ。
10V未満でも動作は停止しない。つまりは、バッテリが上がった状態(11V以下)になってもずっと動作を続け、バッテリにダメージを与え続けてしまうということ。これだけの電流を常時流し続けたら、1週間ほどでバッテリが上がってしまうのではないかと危惧する。

確かにマニュアルに1週間に一度は充電するように明記されているが、実際にマニュアルの通り充電する利用者がどれだけいるか。少々心配になってしまう。

周囲温度0℃~40℃の範囲でご使用くださいとある。えっ!バッテリ近傍に設置するなら多くの場合ボンネット内に設置するだろう。エンジン直近ではこの温度範囲を容易に超えることが想定される。大丈夫だろうか。
次に筐体構造を調べてみた。金属ケースにビス留めしているだけで接合部のパッキンなど防水機構は無いようだ。基板に防水処理が施されているのか?

防水処理はされていない。そのうちに内部に水が浸入して故障してしまうだろう。最悪、正負電源ラインがショートすると車に対するダメージも出てしまいそうだ。ちょっとお粗末すぎるつくりのようだ。販売者はどんなところなのだろう。

中国の業者が直接販売しているようだ。
更にサルフェーション除去効果を検証してみた。といっても、実際にバッテリの内部抵抗やCCA値の変化を見るには1カ月以上の時間が必要なので、そこまではしていない。パルスからデサルフェーション効果を想定してみる。

約2kHzのパルスが出ている。仕様では3.7kHzと明記されているのにその半分程度の周波数しか出ていない。電圧は50V程度であるが、これはバッテリの内部抵抗によって変動するので検証環境ではこの程度の電圧ということになる。
HBR-1000のターボモードは30kHz以上のパルスでありそのくらい高くないとサルフェーション除去効果を発揮することが難しい。エコモードで数kHzであり2kHzよりも高い。それで新たなサルフェーションが付着するのを予防する程度の効果である。
それと比較すると、2kHzではサルフェーション除去効果はほとんど見込めず、現状維持がやっとという程度の効果ではなかろうかと想定される。

電流消費が大きすぎ、その割にパルス周波数が低く、低電圧停止保護が無く、防水機構が無く、動作温度範囲が狭いという諸々の課題がある製品のため、あまりお勧めはできるものではないという結果となった。
安いことで多く売れているようだが、購入者のバッテリは果たして大丈夫だろうかと心配になってしまう。

この装置によってバッテリがダメになることでデサルフェータの市場自体がシュリンクしてしまうことを危惧する。もう少し、まじめに製品を開発し、販売してほしいと切に願う。

<前回へ>                  <次回へ>